原発災害広域避難計画策定の困難性を逆手に取った僕たちの運動
報告がすっかり遅くなってしまったが、2月25日、静岡県危機管理部原子力安全対策課に、UPZ市民団体交流会として下記の文書を提出した。
それに先立って1時半から県政記者室で記者会見を実施。テレビ局や新聞社多数が取材してくれた。後日何名かの知人から、NHKで観たよと声をかけられた。記者会見の写真は撮っていない。下は、危機管理センターで撮影。左側が安全対策課の職員。
2016年2月19日
UPZ市民団体交流会 竹野 昇
報道機関各位
取材依頼
浜岡原発から31キロ圏内15の市民団体で構成するUPZ市民団体交流会のまとめ役をしている竹野です。県が策定中の「浜岡地域原子力災害広域避難計画」に関わるUPZ県内住民側の「要望及び質問書その4」を、2月25日午後、危機管理部原子力安全対策課に提出します。
それに先立って、25日午後1時半から県政記者室にて、提出する文書の説明と私たちの目的(意図)をレクチャーさせてもらいます。取材よろしくお願いします。
日時:2月25日(木)午後1時30分
会場:県政記者室
要望及び質問書提出
25日午後2時過ぎ。危機管理センターにて。
2016年2月25日 UPZ市民団体交流会 静岡県知事川勝平太様 浜岡地域原子力災害広域避難計画に関わる要望及び質問書(その4) 昨年12月25日には私たちが提出した要望及び質問書(その3)に回答いただき、また懇談会も持っていただきありがとうございました。 1月27日に公表された広域避難計画案、2月3日31キロ圏内の11市町と県が実施した原子力防災訓練、9日の原子力学術会議、また昨年末の回答も踏まえ、新たに下記の要望及び質問書を提出します。3月24日までに文書で回答をお願いします。またその席で私たちとの懇談会もできるようお願いします。 1.被曝せずに避難できる計画の作成を改めて要望します 県の避難計画案は住民の被曝を前提とした実測避難になっており、私たち住民とりわけ子どもや若い世代に受け入れられるものではありません。このような計画は住民の不信を招き、万一事故が起きた時は大混乱になって、被害をより大きくします。 年間1ミリシーベルトの法定線量限度を超える被曝を強いることは、明らかに人権侵害であり、住民が被曝しないで事前避難できる計画を作成するよう要望します。もし作成が無理だとの認識なら、その理由を示してください。 被曝せずに避難できるようにするにはスピーディの活用が不可欠ですが、前回の質問に「県としては、予測の有効性を認識しているところであり、スピーディ等予測的手法の活用については、全国知事会等を通じて、他都道府県とともに国に要請をしていきます」と回答をいただきました。この要請課題は進展していますか。もし進展していない場合、その理由をお答え下さい。 2. 県が出している避難計画案の下でのシミュレーションの実施、さらには最悪事態を想定したシミュレーションの実施を要望します 1月27日県が示した避難経路で、さらには東西16か所での避難退域時検査及び除染(スクリーニング)を実施して、1家族車1台3000台毎決められた順番で、要援護者は主として行政が用意したバス等で、18歳未満の子どもがいる家庭は市町がヨウ素剤を配布する場所まで取りに行き子供に服用させたうえ、当座の食料・衣類・貴重品をまとめて避難することを条件に、31キロ圏外に避難するのにどれぐらい時間がかかるか、シミュレーションを実施してください。 福島県では子どもの甲状腺がんが167人(疑い含む)発見されています。子ども達が(妊婦を含め)被曝することなく、安全に避難できる体制を作るには、上記のシミュレーションが不可欠だと考えます。 また津波・地震・原発事故の複合災害を想定したシミュレーションも求めます。津波で通行不能な道路、橋が滑落する恐れがある道路、液状化などで通行不能の恐れがある道路なども考慮し、さらには風向きにより東西2方向に避難できない最悪事態を想定したシミュレーションを実施してください。 もし、シミュレーションを行なわないと回答されるなら、その根拠・理由を示してください。 3.避難退域時検査・簡易除染(スクリーニング)に関してお答えください 現在所有するスクリーニング機材を用い、県が予定している16か所で、11市町の住民と車を全て検査、必要に応じて除染する場合、一番早く終えられると見込める地点で所要どれぐらいかかるのか、対象者・車両が多く一番時間が要すると想定される地点でどれぐらいの時間がかかるのか、教えてください。 9日の学術会議で、スクリーニングの箇所を増やすことを検討していると話されましたが、いつごろまでにそれは決まるのですか。 3月公表される避難計画案には、具体的検査・除染場所が示されますか。 私たちは風向きにより、避難経路を変えるべきだと考えます。従ってスクリーニング場所もその時の状況で変えたほうがより実効性があると思いますが、県はどのように考えますか。 浜松市、静岡市でスクリーニングをする際、両市の職員も検査要員となるのですか。 また、別紙原子力複合災害時の避難退域時検査・簡易除染に関する質問用紙にお答え下さい。 4.事業者(中部電力)の避難計画への具体的協力を教えてください 県が策定中の避難計画には、事業者(中電)が避難退域時検査及び簡易除染に具体的にどのような協力をするのか明記されていません。スクリーニング機材を提供するのか、検査要員を派遣するのか、事前の職員研修に協力するのか、また県が具体的に中電に要請していることがあれば、教えてください。 私たちは中電が引き起こす事故に伴う避難対策・対処には、事故に責任がある中電が費用負担すべきだと考えますが、県はこの点どのように考えていますか。 5.要援護者避難のバスが何台必要で、何台用意できるのか、運転手の確保ができるのか教えてください 病院の入院患者、社会福祉施設の入所者、在宅の要配慮者で家族の支援が受けられない人、学校等で家族に引き渡しができない児童らの避難につき、それぞれの施設で必要な車両が確保できない場合、県及び市町がバス・福祉車両等を確保することになっています。自家用車で避難できない要援護者も含め、具体的にバスが何台必要で、県内で何台確保できるのか、福祉車両が何台必要で、県内で何台確保できるのか、また運転手が確保できるのかも教えてください。 また、バスはどの段階で当該施設に配置されるのですか。 6.住民参加の避難計画を要望します 行政が一方的に避難計画を策定しても実際に避難するのは住民です。住民の理解・協力なしでは、混乱なく速やかな避難、さらには受け入れ先での秩序ある避難生活が到底見込めません。 イ)4月以降市町の避難計画策定にあたり、住民参加の避難計画策定となるよう、県の指導を要望します。 ロ)また、内閣府が地域防災計画の充実に向けた今後の対応として、原子力発電所の所在する地域ごとに、課題解決のためのワーキングを速やかに設置し、(中略)避難計画の充実化を支援するとしていますが、このワーキングは御前崎市だけに設置されるのか、UPZ圏内全てに設置されるのか教えてください。 ワーキングに住民の代表が入れるよう要望します。 7.計画に沿った避難訓練の実施を要望します 2月3日の原子力防災訓練はわずか300人が参加しただけで、これでは実際の避難時に94万人がヨウ素剤の配布、放射能汚染検査・除染をうけて、混乱なく速やかに31キロ圏外、さらには指定された避難先に避難できるかどうかは分かりません。 学術会議でも「実際にやってみないと分からない」という指摘がありました。県が策定した避難計画が機能するか実証するために、原子力災害広域避難大規模訓練の実施を要望します。 8.3月末県が公表する『広域避難計画』をもって、『避難計画策定完了としない』ことを要望します 2月9日の学術会議でも県の担当者が3月の策定で完了とせず、4月以降改良を加えていくと言明されました。牧之原市、菊川市、掛川市、袋井市、磐田市にはいまだ避難先の提示がありません。すでに提示があった市町にも、大規模地震など複合災害時の県外避難先の提示はありません。 仮に3月の公表時に提示があっても、11市町の担当者が相手先と協議するのは4月以降です。受け入れ先と十分な協議、相互の信頼に基づく協力体制構築なしに、避難先発表で原子力災害広域避難計画策定完了とはなりえません。 川内原発、高浜原発は、鹿児島県・福井県の実効性なき避難計画策定で、再稼働されました。 この愚を繰り返さないため、静岡県においては『11市町の実効性ある避難計画(住民が納得できる、要援護者を抱える施設側が納得できる)が策定されない限り、県当局として広域避難計画策定が完了していない』と理解してよろしいでしょうか。 9.安定ヨウ素剤の配布・服用に関して イ)県の計画では、国の指示に基づき又は独自の判断で、直ちに安定ヨウ素剤を服用するよう住民に指示する、とありますが、「独自の判断」とは県当局のみをさすのですか?避難する自治体当局の独自判断も含むのですか、あるいは各施設・家庭の独自判断も含むのですか? ロ)平日の事故で全面緊急事態に至った場合、児童生徒の甲状腺がんを防ぐには、保護者に引き渡す前に薬剤師等専門家を学校に派遣して児童生徒に服用させたほうが効果があり、保護者も安心できると思われます。 このため、前回(その3)でも要望しましたが、保育園・幼稚園・学校に安定ヨウ素剤を備蓄し、教職員が服用の指導ができる体制について、教職員らと十分な協議を重ねることを要望します。 ハ)またUPZ圏内の成人も含む希望者には、事前配布を要望しますが、県はどのように考えますか。 10.避難者(対象)の範囲について 今回示された「避難単位」によりますと、11市町の全住民が避難するとはなっていないと思われます。これはUPZの範囲を、全域とした市町と、31キロ圏とした市町の違いによると思われますが、そのため31キロ超については、市町によって避難する者と避難しない者が生ずることになります。 例えば、同じ31キロ超の住民は、掛川市と焼津市は避難するが、藤枝市、磐田市、森町は避難しないことになります。 このことについてのお考えを説明してください。なお、2014年11月27日の回答では、藤枝市を例に出し「全人口で考えている」とのことでした。 UPZ市民団体交流会参加団体 さよなら浜岡原発・焼津市民の会(焼津市) なくそう浜岡原発 命とふるさとを守る藤枝市民の会(藤枝市) 避難者を支援する志太榛原住民の会(藤枝市) 浜岡原発はいらない島田の会(島田市) 安心して暮らせる島田を創る市民の会(島田市) 浜岡原発をなくそう・吉田町民の会(吉田町) 浜岡原発を考える牧之原市民の会(牧之原市) 浜岡原発の危険から住民を守る会(菊川市・御前崎市) 浜岡原発はいらない・命を守る菊川市民の会(菊川市) 浜岡原発を考える会(御前崎市) 掛川金曜アクション有志の会(掛川市) 原発いらない掛川の主婦たち(掛川市) 浜岡原発を考える袋井の会(袋井市) 浜岡原発はいらない磐田の会(磐田市) 明るい未来を!磐田(磐田市) UPZ市民団体交流会連絡先 437-0035 袋井市砂本町2-10 竹野昇(浜岡原発を考える袋井の会) 電話・フアックス 0538-43-3456
*静岡県当局は3月末までに原発災害広域避難計画策定を目指している。袋井市をはじめ、多くの市に対して避難先の提示はまだない。仮に3月末までに避難先の提示はあっても、各市町の担当者が相手先に行って、受け入れ施設を見学したり、相手先の行政と細かい打ち合わせや協議をするのは4月以降になる。
僕たちはこの点を鋭く口頭で突き、3月の策定公表は完全のものでなく、策定中のものであることを、危機管理部に認めさせた。
さらに県の計画を実効性あるものにするには(完全な実効性ある計画は不可能であるが)、県の計画で混乱なくすみやかに避難できるのかシミュレーションをやり直すべきだと、強く要望した。
回答は3月末にある予定。粘り強くこの問題で行政を話し合う過程で、多くの県民に原発災害の深刻さを考えてもらいたい、一番の安全対策は「再稼働をしないこと!」であると、理解してほしいと願っている。
昨日出た大津地裁判決でも、避難計画のことを問題視していた! 川内原発、高浜原発は、全く実効性無き避難計画で再稼働されてしまった(大津地裁判決は、だからこそ、運転停止の仮処分決定を出してくれた!)。
浜岡では、この判決を最大限活用し、実効性ある避難計画が策定されなければ再稼働はあり得ない、この認識を行政も、首長も、議員も、全ての住民も持つよう、世論を形成したいと考えている。
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