土地区画整理法 行政権力 大和ハウス工業本社 との 小さな闘い
静岡県袋井市での土地(農地)を守る闘いを、議員となって4年間継続している。今年で5年目になる。極めて厳しい状況にあるが、私有財産を守り、農民の権利を守り、水害から住民を守るために、困難な闘いをしている。
経過を1月22日に市内全域に新聞折り込みで配布した「竹ちゃんの市政便り」を引用して説明します。
【 大和ハウス工業の工場移転のため、土橋工業用地開発計画を、土地区画整理事業で進めようとしている問題点 】
- 予定地のほぼ真ん中に水田を所有し米作りをされておられる地権者を無視して事業を進めようとしている.②県企業局が断念した計画を、土地区画整理事業で進めようとしているが、民間企業の工場用地整備にこの手法は使うのは無理がある。公共事業でないから不同意地権者の土地を強制収用できない。③13ヘクタール以上の水田を埋め立てると、下流域の木原地区が道路冠水や床下浸水被害の恐れがある。④大和ハウス工業は、現在の自社所有地で問題なく操業しており、工場建て替えは現敷地内で実施可能。単なる工場移転は、新規事業者の進出でないので、袋井市への財政的貢献は、現在と変わらない。⑤土橋地区の埋めたて予定地に近い住民にとり、景観や風の流れが悪くなり、環境が悪くなる。⑥予定地の水田は、農業振興地域であったが、その指定除外を地権者・耕作者に知らせずに行った。⑦農地転用を、転用を望まない地権者を無視して行った。
*私は以前からこの事業を問題視し、議会一般質問でも度々取り上げています。地権者に寄り添い、農業と農地を守っての食料安保・水害防止の観点からもこの事業に反対し、事業の断念を求めていきます。
難しいのは、土地区画整理法に基づき、既に仮換地指定が反対地権者が持つ農地約1100㎡に対してされ、今までのように米作りができないようにされている点だ。この問題を下記の文章で説明します。個人情報保護のため、氏名・住所はカットしてあります!
静岡県知事川勝平太様
袋井市土橋土地区画整理組合による仮換地指定通知に不服があり、審査請求書を提出します
請求人 Aさん
2023年10月18日に、袋井市土橋土地区画整理組内 理事長 大庭哲夫氏から、私が所有する水田に対して、仮換地(街区番号2
画地番号4 地籍 636,10㎡ )を指定する通知が届きました。
私は従前から大和ハウス中部工場の移転を目的とする本事業に反対しており、整理組合にも入っていません。勝手に仮換地を用意し、令和5年10月19日より、従前の土地を使用し、収益することができない、と通知されて困惑しています。
私は、自分の所有する水田で米作りを50年以上続けてきました。ここでの所有地は1128㎡と広くはありませんが、南側隣接する水田を所有者からの依頼で50年以上耕作しており、大型農機具を購入し、また肥料などを入れ、愛着を持って丁寧な耕作を続けています。
土橋工業用地開発計画は、2018年に市当局から出てきました。地元から出ている有力議員と、予定地を所有しているが他者に耕作してもらい自らは耕作していない地権者らが市当局と一体となり、計画を進めてきました。
知事に知っていただき事項があります。① 予定地は農業振興地域に指定されている優良農地です。弥生時代から米作りが行われてきた水田です。袋井市は、農地転用には地権者全員の同意が必要であるので地権者の同意を得やすくするため県企業局に依頼して、県企業局の事業として地元に降りてきました。
② 13ヘクタール以上の水田を実際に耕作している地元の農民はごく少数で、大半は耕作していないので、開発で農地が売れればありがたいと皆さん賛成し、公に同意しないのは私1人となりました。保守的な狭い地域で人間関係もあり、公然と反対できない人もいます。また土橋地区の住民ではありませんが、大規模耕作者が予定地水田の多くを借りて耕作しており、予定地に耕作放棄地はありません。埋め立て事業が行われなければ、今後も優良水田であり続け、静岡県の食料供給地として公益性を発揮できます。
③ 予定地は、静岡県と袋井市が治水対策で協議して、保全すべき水田に指定されています。半世紀以上前の七夕豪雨で太田川が氾濫し、袋井市は大変な水害を被りました。またそれ以降も予定地の蟹田川が水の流れが悪く、土橋地区だけでなく下流の木原地区や、磐田市側の一部地区も度々水害を受けてきました。
国土交通省も流域治水の考えを取り入れ、水田を緑のダムと位置付けています。近年の線状降水帯による豪雨で、全国的にも水害被害が発生していますが、袋井市は度々床上・床下浸水被害、道路冠水被害を受けています。予定地が全て埋め立てられ大半がコンクリートで覆われたら、周辺地域の水害はもっと酷くなるものと思われます。小さな遊水池公園や工場駐車場予定地地下に遊水池を作っても、被害軽減にさほど役立たないと思われます。
④ 大和ハウス工業は袋井市内の広大な自社所有地に工場を持っており、現在も問題なく事業を展開しています。新規工場を建設したいとの意向があるようですが、自社の敷地内で計画的に工場を建て替えていけば、土地買収費用も発生せず、問題なく今後も袋井市で事業継続できるものと思います。
⑤ 私及び家族は、この工業用地開発計画に翻弄されてきました。市当局のやり方に不信感と怒りを持っています。2018年3月に、産業政策課の幹部職員が自宅にやってきて、「あなた一人が反対しても、周りが全部埋め立てられれば自分の田んぼに行くことができなくなり、耕作できなくなりますよ」と脅されました。
2019年1月に担当課職員2名が自宅に押し掛け、土地を売ることへの同意を迫りました。地域でもこの件で会合がもたれ、不同意を続ける私及び家族への圧力が強まってきました。
同年3月に市職員が自宅に来て、代替耕作地を用意したから、この書類に同意の印を押してくれ、これは正式の同意書でなく、仮の同意書だと言うので、市当局に対して弱い立場である私は、不承不承、判を押しました。東京の桑原弁護士に書類を送り相談したところ、「これは仮の同意書ではない。仮という字がどこにも入っていない。本物です。」と指摘を受け、ショックでした。市職員が市民にウソを言うのは反社会的行為です。3月18日に妻と共に市役所に出向き、同意書取り消しの考えを直接伝えています。
自分たち夫婦でだけで市と向き合うのは不安なので、3月末に市議会議員竹野昇氏に相談しました。それから度々竹野議員と会い、詳しい経過や私達家族の思いを伝え、強力な後ろだてが出来たので、弁護士と相談して、同意書取り消しの通知を市役所に出しました。すると市職員から度々の電話や自宅訪問が続きました。
竹野議員が6月議会一般質問でこの問題を取り上げる通告書を市議会事務局に出したら、その内容が地元議員に伝わり、一般質問の直前の日に、地元市議会議員・工業用地推進の地域有力者が1時間半にわたり、同意書取り消しを撤回しろと迫り、2人が見ている前で「同意書取り消しを撤回します」と市に電話しろときつく言うので、泣く泣く担当課の職員にその旨電話させられました。
妻は夜、担当市職員の自宅に電話して、「納得して取り消した訳でない」と伝えました。
竹野議員には「ご本人が同意書取り消しを撤回したので、この問題は一般質問から除いてほしい。」」と市役所で市議会議長から伝えられ、事情が分からない竹野議員はやむを得ず、一般質問のこの件に関する項目は通告書から除外して、一般的な埋め立ての問題点を翌日の議会で取り上げてくれました。その後私達夫婦は勇気を出して、「電話で同意取り消しを撤回すると伝えたが、同意書取り消しの通知文書は今も生きている。圧力を受けて口頭での取り消し撤回は法的に効力がないと弁護士先生からアドバイスをもらっている。」と、担当課に電話で土地を売るつもりはない、この事業には不同意である考えは変わっていないと伝えました。
すると其の後も度々市職員が自宅に押しかけ、不当な圧力が続きました。当時、私は部農会の地区会長をしていましたが、部農会の会合でも「貴方一人の不同意のため、皆が困っている。地域の発展のためにも同意してくれ。」と皆から圧力が加えられ、地域で暮らすのが苦しくなってきました。部農会役員が、農業振興地域からの除外に同意してくれ、農地を売却してくれと、度々自宅に押し掛けるようになり、部農会の会長を辞めさせる圧力も強くなり、たまりかねて私は部農会会長を年度末に辞任しました。
副部農会長が繰り上げで会長となり、農業振興地域の除外について私が納得していないにも関わらず、全員が賛成しているとの文書を作成して、県に提出しました。このようなやり方にも怒りと不信感を持っています。
⑥ その後竹野議員が県企業局に何回か行ってくれて、私の気持ちをきちんと伝えてくれた結果、令和2年度予算に当初土地取得費11億4,6000万円を計上してありましたが、農地転用ができない、事業たりえないと、県企業局が当初予算をゼロにする補正予算案を2月議会に出し、令和3年3月にその案が承認され、事業から撤退しています。
⑦ その後推進派の地権者と地元議員が市当局に働きかけ、土地区画整理事業と言う手法で意地でも開発計画を達成する準備を進め、今日に至っていますが、私の決意・考えは変わっていません。地域の新住民の方たちは、水田が埋め立てられると景観が悪くなり、涼しい風も来なくなって、最近の地球温暖化のせいで高温がつづいているのに埋め立てで地域の温暖化が進む、さらに水害の心配もあり、土地区画整理事業に賛成しているわけではありません。
⑧ 2023年6月末、大場袋井市長が地権者に事前の相談無く、市長権限で、農業振興地域の解除を県に申し出て、県担当課が同意したので、現在予定地13ヘクタール強は、青地から白地に変わっています。農業委員会で農地転用の審議はまだやっていませんから、現在地はあくまでも農地です。
私だけでなく予定地で耕作している農民にとり、耕作者に無断で農業振興地域から除外する行為は、理解に苦しみます。農業を袋井市は重視していないと受け取れます。食料安保と言われますが、危機的な世界情勢にあって、農地をつぶすための除外は、食料自給率を高めようとする国策にも反すると思います。
竹野議員が情報公開請求で、農業振興地域除外に至る経過が市の会議録などにあるはずだからと公開を求めたところ、市当局が令和5年4月14日から5月15日まで市役所農政課で「農業振興地域整備計画の変更案及び変更理由書」を縦覧した事実が判明しました。地権者誰一人にも通知を出さずに、市の広報にも縦覧告知をせず、密かに形式的な縦覧をやっていました。これでは、農業振興地域からの除外に対する意見書を出せるわけがありません。市当局は県担当者に、意見書を出したものはいない、反対者はいない旨伝え、県は農振地域除外を認めています。
⑨ 私が持つ耕作権(50年以上、地権者の依頼に基づきその方のたんぼを耕作している。)は、大きな課題です。私は耕作権を手放すつもりはありません。
⑩ 最後に、日本国憲法第29条は、財産権はこれを犯してはならないと定めています。土地区画整理事業の法令よりも上位の憲法が、私有財産権を保障しています。
土橋土地区画整理事業は、単なる民間企業の移転のための事業であり、公益事業ではありません。このため、土地強制収容はできません。私は憲法が財産権を認める私有地で将来にわたり、米作りを続ける決意です。後継者もおります。
私有財産権を犯す今回の仮換地指定には到底納得がいきません。以上の理由で、不服審査請求をする次第です。
なお、この審査請求書を出すにあたり、県景観まちづくり課に問い合わせ、審査請求に当たり必要な書くべき事項を教示してもらいました。
2023年11月 22 日
上記の文章はAさんの依頼を受け、僕が作成し、県知事あてに送ったものです。
これに対し、土地区画整理組合側から反論書が届き、それに対する反論を作成し、担当課に送ったものが下記です。
総括審理員 影山 浩一 様 令和6年1月19日
審理員 神谷 拡寿 様
袋井市土橋土地区画整理組合の弁明書への反論
弁明書4. 審査請求書に記載してある事項の認否 の下段、「審査請求人は、袋井市土橋土地区画整理の施工区域内の土地の所有権を有しており、袋井市土橋土地区画整理組合の組合員であることをご理解願います。」と記載されているが、私は不服審査請求書の冒頭に記載してあるように、整理組合の組合員ではありません。
組合に入る同意書も出していません。準備段階も含め組合の会合案内通知は自宅に届いたことがありません。私が組合員であると言うのなら、会合案内を出さないのは理解に苦しみます。弁明書の記載内容に納得できません。
土地区画整理法 第3節 仮換地の指定 第98条 3 に、従前の宅地の所有者(中略)の同意を得なければならず、とあり、私は仮換地に同意していません。
一方的に仮換地を指定してきても、組合員でもなく、また同意もしていない私が、仮換地で米作りをする必要性がありません。
審査請求書⑩の所に、憲法第29条、財産権はこれを犯してはならない、を引用して、「私は憲法が財産権を認める私有地で将来にわたり、米作りを続ける決意です。」と自分の意見を述べています。土地区画整理組合の弁明書には、仮換地で米作りができるとありますが、私は土地の交換をする意思がなく、どのようなことがあろうとも私有地を売る考えはありません。今回の事業は単なる民間企業の工場移転用地開発計画であり、公共事業ではありません。強制収用はできません。土地区画整理組合が事業を完成するために、どのような手段で私の土地を所有するつもりなのか、不明です。
この問題を組合が明らかにすべきです。土地の完全取得ができない・事業が完成できないのに仮換地を指定するのは、おかしいと思います。このような理由で、審理員におかれましては、仮換地指定を認めない採決をお願いします。
袋井市土橋 A
書面でのやりとりがしばらく続く。先日この問題で浜松市の弁護士事務所を訪問し、相談した。弁護士でも最初は、仮換地指定されてしまったら指定された農地で耕作するほかないと言う。僕は憲法で保障されている財産権を盾に、Aさんの土地は民間企業が事業者になっているのだから、絶対に土地を取得できないはずだ、農地でなく宅地にされてしまっているので農業用水は利用できなくなるかもしれないが、自分の土地で野菜つくりなどはできるはず、と主張し、弁護士が土地区画整理法を解釈する専門書で調べてくれた。
公共性のある建物などを作る予定の土地に所有地を持っている場合は、自分の土地であっても自由にできないとあるが、今回のように民間企業の工場建設の場合の例に関しては記載がない。
実は国土交通省の担当課に電話して弁護士に相談する前に聞いているが、今回のケースは珍しい、土地の取得に関しては「民と民」の問題になると教えてくれた。土地区画整理法をインターネットで調べた。仮換地指定に従わない場合にどうするかは、記載がない。公益ある事業なら、強制収用できるからだ。色々調べて分かったことがある。
権力を持つ行政が、事業をやりやすくする法律が、土地区画整理法であることを。反対地権者がいても、8割以上の地権者が賛成すれば、事業ができる仕組みになっている。しかし、法律をよく読めば、権利が守られることも分かった!
地権者Aさんは、どんなことがあっても土地を売らない決意を固めている。大和ハウス工業が事業を完成するのは無理だ。行政権力の問題は、下記の文章を参照してほしい。
袋井市農業委員会
委員長永田様
農地転用に関する要請書
12月18日に農業委員会が開催されると聞きました。私は土橋地区に水田約1128㎡の農地を所有しています。また隣接する水田を50年以上も所有者からの依頼で耕作しており、その水田は私が耕作権(小作権)を持って居るものと考えています。
袋井市当局は、大和ハウス工業の工場移転地確保のため、約13ヘクタールの優良農地を埋め立て開発する計画を立てていますが、私は自分が所有する農地で米作りを継続したいと考えており、農地の転用を望んでおりません。
また隣接する水田もこれまで同様に耕作をしたいと考えています。後継者もいます。水田を埋め立て開発すると、蟹田川下流の木原地区や西側磐田市の一部地区も水害の恐れがあり、流域治水の観点からも緑の田んぼダムを残すことが大切と思っています。
以上の理由で、私の農地と隣接する農地を農地転用しないでください。
令和5年12月13日
農地利用課様 2024年1月18日
農地法第4条第6項3号の解釈についての問い合わせ
袋井市議の竹野です。袋井市土橋地区の農地13ヘクタール余の農地転用がすでに認められていると鷹野正幸班長から聞きました。
農地法を調べ、転用が納得できないので、問い合わせをします。
農地法第4条第6項3号
申請に係る農地を農地以外のものにする行為の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていないこと その他農林水産省令で定める事由により、申請に係る農地の全てを住宅の用、事業の用に供する施設の用その他の当該申請に係る用途に供することが確実と認められない場合
上の条文に、A氏と彼の私有財産である土地1128㎡が該当すると思います。
「行為の妨げとなる権利を有する者」とは、強制収用できない土地を所有するA氏です。彼は農地転用に同意していません。
彼が所有する土地は、大和ハウス工業の工場移転のほぼ真ん中にあり、「申請に係る農地の全てを、事業の用、施設の用に供することが確実と認められない場合」とある条文に、今回のケースは当てはまります。不退転の決意で大庭功氏は絶対に土地を売らないと申しております。工場を建てる用地全てを土地区画整理組合は確実に取得できません。
以上の理由で、私は農地転用を認めたのは、農地法の解釈を誤っていると思いますが、釈明を求めます。文書で1月末日までに回答をお願いします。
回答送付先 437-0035 袋井市砂本町2-10 竹野昇
*こうした文書を地権者のために作成し送ったが、農政課の担当者は、農地転用を求める出された書面が問題がなければ、粛々と手続きを進め、問題なしと回答してきた。
沖縄辺野古埋め立て問題でもそうだが、行政の権限でこれは問題ありと判断して無謀な事業・工事を止めることができると思うが、行政はそうしない。住民・市民に寄り添い、権利・環境・自然・大きな意味での公益を守ろうとはしない。
だからこそ、あきらめずに、粘り強く、闘うほかない。
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