今日8月2日の中日新聞1面に、大きな見出しと顔写真入りで、袴田秀子さんへのインタビュー記事が出ている。新聞見出し「つらいが当たり前 狂気の時代」 「白を黒という権力 恐ろしい」 「袴田ひで子さん戦争語る」
1944年、米軍による空襲を度々受けた浜松市近郊浜名湖近くの国民学校に、姉のひで子さんと弟の巌さんは通っていた。米軍の空襲があるたびに、ひで子さんは巌さんの手を引き急いで帰宅したそうだ。
45年7月29日の米軍艦からの艦砲射撃の際には山に逃げ、砲撃の音や飛行機の音が耳について眠れなかったのを鮮明に覚えているそうだ。
戦争が終わり、自分は15歳で税務署に勤務。弟はプロボクサーとして活躍。戦後20年は穏やかな日々が続いた。が、戦後21年目の1966年6月以降、突然袴田さんの家族は、国家権力により、不幸・悲劇のどん底に落とされた。清水市の一家4人強盗殺人事件の殺人犯に巌さんがでっち上げられた。
いわゆる袴田事件だ。袴田さんには何の関係もないのに、マスコミは”袴田事件”として、極悪非道の犯人として報道。ひで子さんの家族(お父さん、お母さんたち)は巌さんの無実を信じ、冷たい世間の雰囲気の中、必死に生きてきた。
父母が無くなり、自分が弟の無実を晴らすために頑張らねばと、必死に働き、また長い闘いには自分の健康が大切だと、毎朝30分の体操(運動)を続け、前向きに明るく、気丈に生きてこられた。
7月31日、浜北文化センターで、「反骨 袴田事件 苦悩と正義の58年」と題した演劇があり、鑑賞した。演劇終了後、舞台に上がってあいさつされた秀子さんはにこやかに演劇の感想を述べられた。
再審裁判終了後の記者会見でもテレビに映る秀子さんは、常ににこやかだ。しかし、僕は彼女の笑顔の背景に、人に言えない苦労・悩みがあっただろうと察している。
相手はまず警察。恐ろしい組織だ。普通の人は警察は悪いことはしない!と信じている。犯人逮捕のテレビ新聞報道が出ると、誤認逮捕と思う人はまずいない。情報がないから、警察発表をうのみにするほかない。
まして、殺人犯に仕立てるために証拠をでっちあげたり、拷問に近い取り調べで、やってもいないのに「自分がやりました」と自白を強制するなぞ、あり得ないと思うのが普通だ。
検察組織は、警察情報や警察が集めた証拠や自白・目撃証人などのストリーに従って、裁判ではやってもいない人を殺人犯と断定して有罪判決を裁判官に求める。
この検察を疑う人も、普通にはいない。検察が隠し持っている証拠の存在を知らない。報道で死刑求刑と出ると、それを妥当と受け止める。まして裁判官が死刑判決を下しても、それは間違った判決と疑う人はまずいない。
権力機構の裏顔・事情(世間から犯人逮捕を迫られ、とにかく誰かを逮捕しないと警察は何をやっているのだと非難されるプレッシャー。警察組織から上がってきた証拠や誘導自白の本当の事実を明らかにするには、検察官自身が警察組織を敵に回すことになり、大変な勇気と信念が必要で、普通の検察官は無難を選ぶ。裁判官も同じ。無罪判決を出すには、警察・検察組織の主張を否定し、何故被告人が無実なのかを論理的に世間にも分かりやすく説明する(判決文作成)努力が必要になる。
一審判決を覆す、高裁判決を覆す、最高裁判決は間違っていると再審開始判決を下すのは、裁判官にとりとても大きなプレッシャーであり、自分の出世(地裁から高裁、判事から裁判長、地方の裁判所から大都市の裁判所勤務、最高の地位である最高裁裁判官へと順調に階段を昇り詰めるには、安易な判決を下すほうが楽と考える。
恐ろしいのは、権力組織にいる人たちは、組織と自分の身を守るためには、無実の人が有罪で人生を台無しにさせられる・極端な場合死刑になるのを、意に解さない。
戦争を計画し、軍隊組織を動かし、その結果、兵士や一般国民が戦争の犠牲者になっても気にもしない・やむを得ないと考える国家権力機構のトップや幹部たち。
ひで子さんが「白を黒という権力は恐ろしい」と記者に語った背景には、人に言えない権力機構と闘ってきた歴史がある。苦難に落とし込まれた”普通”の女性が、長い戦いの中で完全無罪判決を勝ち取り、人々に笑顔で接する背景に、僕はすごい人だなと脱帽し、尊敬の念を抱いている。
31日演劇終了後舞台あいつを終え、記者に囲まれている秀子さんに近づき、「5月3日袋井市での講演を依頼した竹野です。」と名乗り、名刺を渡して、「講演が近づいたらまたお電話します。」と手短に挨拶を交わした。
来年5月3日、憲法記念日に、「人権」をテーマに、袴田秀子さん講演会を袋井市で開催します。ここ数年、教育会館4階大会議室が「全館清掃」のため、使用できなかったが、教育委員会に全館清掃を連休中の別の日にしてほしいと依頼し、それが認められて来年は久しぶりに市役所の大きな駐車場も使用できる会場で、「憲法記念日袋井市民のつどい」「袴田秀子さん講演会」を開催します。
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